フィンランド語の言語改革の時代 (1820年~1870年)

「民衆の話しことば」により近い言語形態へ

聖書のフィンランド語訳を含め教会で使われてきた伝統的なフィンランド語文語は,スウェーデン語の語彙・語法の影響が濃い西フィンランド方言に基づくもので,19世紀になって,フィンランド語の使用領域が社会的に広がり,人口の点で優勢で,スウェーデン語の影響の少ない東フィンランドの方言の話者の台頭とともに,伝統的な文語に対する批判的意見が強くなる。

表記法の面では,スウェーデン語の綴りの影響を排除し,フィンランド語の音韻構造に忠実な,音素表記に近い正書法が確立が定着したほか,文法面では,従来の西フィンランド方言に基づく文語の伝統を基本的に維持しつつ,語彙や表現の面で,東フィンランド方言の要素を大幅に取り入れた標準文語が,19世紀の半ば過ぎにはほぼ確立した。

正書法 (orthography) の改革

子音字 d の表記と発音をめぐる論争

いわゆる「方言間抗争」(murteiden taistelu) における中心的論点。ほとんどの方言で消失した「歴史的な子音」を表記するために使われてきた文字。多くの論者が廃止を主張したが,標準文語の綴りに残される。→「言文一致」の原則により,標準語の音素として実際に発音されるようになる。

更新日 2005/11/06 — Copyright © 2005 by Kazuto Matsumura