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Unicode 対応フォント

どんなものがあるか

Web で手に入る Unicode 対応フォントを探すには,次のサイトが役立つ。

実は,Windows XP)に付属している基本的なフォントは,すべて Unicode 対応のフォントである。いいかえると,一般的で誰でも知っているような音声記号や,特殊なキリル文字等は,Windows のシステムに付属し,Windows の文書作成で標準的に使われる MS明朝や Times New Roman のようなフォントにひととおり収録されており,特別なフォントをインストールしなくても,たいていの人はそれで間に合うはずである。しかし,現実には,多くのIPA音声記号等の特殊文字がキーボードから直接入力できないために,システムの外字として入力する習慣が,依然として根強く残っている。

MS明朝や Times New Roman のようなフォントは,しかし,音声記号等の特殊文字を網羅的に収録しているわけでは決してなく,特殊文字を多用する言語研究者は,標準的なフォントよりは,音声記号等の特殊文字を網羅的に収録したフォント,いわゆる「音声記号フォント」を持っていた方がよい。David McCreedy のフォント目録の中の音声記号フォントのページを見ればわかるように,すぐれた音声記号フォントは多数出回っているが,私が使って知っている(実際に使っている)フォントは次の3つである。

  1. Lucida Sans UnicodeWindows に付属する Unicode フォント。Web ページで音声記号を表示するときは,このフォントを指定するのが無難だが,いわゆる sans serif フォントなので,印刷用としては不満が残る。 (Microsoft Office に付属する Arial Unicode MS フォントは,おそらくこれの上位フォントと思われるが,未確認。)
  2. Doulos SILSIL International が提供する serif フォント。Times New Roman 風の字体なので,音声記号を多用する場合は,Times New Roman の代わりに,デフォルトの英数字フォントとして用いることができる。 [ Doulos SIL フォントのダウンロード ]
  3. JLOT-Fluralic — 私の科研費プロジェクトの研究費を使ってフィンランドで作製した serif フォント。OpenType 使用なので,高品位の印刷もできる。[ JLOT-Fluralic フォントのダウンロード ]

この3つのフォントを使って音声記号を入力し印刷すると,この文書のようになる。使ったフォントの大きさは14ポイントである。以下,上で述べた音声記号フォントがインストールされた Windows XP パソコンを使用しているものとして話を進める。

IPA音声記号とUnicode

IPA音声記号のひとつひとつの Unicode におけるコード番号は,IPA音声記号の公式の解説書 『国際音声記号ハンドブック』(大修館書店, 2003)に載っているが,次のWebサイトも便利である。

  1. IPA transcription in UnicodeIPA 音声記号のコード番号ほか)
  2. IPA chart - in glorious technocolour UnicodeIPA音声記号が Web で表示できることを示している感動的なサイト)
  3. The Unicode Character Code Charts (Unicode の公式な文字表の中の音声記号関連項目)

Unicode の特殊文字の入力

Unicode は,世界で使われている様々な文字の1つ1つに固有な番号 (コード番号) を対応させる国際規格である。ここで,「文字」といっているものの中には,記号や符号なども含まれる。文字を1つ1つ固有のコード番号に対応させるという観点から見るとき,コンピュータにとって,音声記号は,漢字やサンスクリット文字などと同列に扱うことができる特殊な文字の集まりにすぎない。言い換えるなら,音声記号の入力にまつわる問題 (キーボードからの入力がむずかしかったり,できなかったりする) は,世界の言語の表記に使われる特殊な文字の入力の問題の特別なケースにすぎない。

文字コード表

Windows で特殊な文字の入力を行うもっとも単純な(簡単という意味ではない)方法は,「プログラム」→「アクセサリ」→「システムツール」の「文字コード表」を使うことである。上の図は,私の使っている Windows の「文字コード表」でフォントを「Doulos SIL」に設定して,IPA拡張の付近を表示させて,音声記号 ʃ (Unicode のコード番号0283; 以下 U+0283 と表記)を選択したときの画面である。「文字コード表」はすぐにはアクセスできない場所にあるので,頻繁に使うには,ショートカットをデスクトップ上に作っておくと便利である。

「文字コード表」より便利な方法は,日本語入力システムに付属しているツールを使うことである。たとえば ATOK18 (ATOK2005) では,この種のツールを「文字パレット」と呼んでいるが,このツールは,「文字コード表」に比べると,比較的簡単に呼び出すことができるので便利である。次の図は,「ATOK文字パレット」で「Unicode表」を選び,「見出し」と「フォント」をそれぞれ「IPA拡張」「Doulos SIL」に設定して,音声記号 ʃ (U+0283) を選択したときの画面である。

文字パレット

同様のツールは,たいていのワープロソフトに付いている。たとえば,次の図は,OpenOffice というフリーのオフィスソフトのワープロ (MS OfficeWord に相当) のツールバーで,「挿入」→「記号と特殊文字」を選び,「フォント」を「JLOT-Fluralic」,「種類」を「IPA拡張」に設定し,音声記号 ʃ (U+0283) を選択したときの画面である。使い方は「文字コード表」や「文字パレット」と似たり寄ったりである。

OpenOffice

似たようなツールはほかにもたくさんあると思われるが,いずれも,特殊文字を1回に数文字程度入力すればすむような文書を作成するときに使うのには申し分ないが,文字のない言語の録音資料が一定量あって,それを音声記号で文字化しようとするような場合には,実用的なツールとはいえない。このような現状が少しでも緩和できるようにとの願いから,私の科研費のプロジェクトの副産物としてできたのが,UniInput と呼ばれるツールである (次の図を参照)。

UniInput

このツールは,作製した特殊文字のテクストをファイルに保存できるなどの機能を備えた簡易エディタである。ただし,上に紹介したようなツールと異なり,ワープロソフトと連動しないので,ワープロ文書作成画面に直接音声記号を挿入することはできない。[ 参考: UniInput に関するくわしい解説 ]

更新日:2006/03/28