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カンテレ (kantele)

フィンランドの伝統的楽器カンテレは,チター (zither) の一種に分類される弦楽器で,その仲間には,エストアの kannel,ラトビアの kokle,リトアニアの kankle や,ロシアの гусли がある。フィンランド語の叙事詩『カレワラ』(Kalevala) に登場して大きな役割を果たす楽器であるところから,19世紀以降のフィンランド・ナショナリズム高揚期に,フィンランドの民族楽器とみなされるようになった。

古いタイプのカンテレは,木片に穴を彫り,弦を張って作ったもので,5弦がふつうであった。銅製や鋼鉄製の弦が登場する以前は,馬の毛を縒り合わせた弦が用いられた(ただし,フォークロアには,若い娘の髪の毛を縒り合わせたカンテレの弦も出てくる)。このタイプのカンテレは5音階で,フィンランドとカレリアでは,指でつまんではじく方法で演奏された。

複数の板を組み合わせてカンテレが作られるようになると,弦の数も増え,演奏手法も変わって,民間音楽は,カレワラ風の民族音楽の時代から,ペリマンニと呼ばれる音楽師の時代に移行する(18世紀の後半頃)。ただし,5弦のカンテレの伝統を今日まで保持している地方もある。主旋律と伴奏を別々の手で演奏する大型のカンテレは,10音階である。1920年代には,ハープのペダルに似た調音装置が考案され,半音階などにも対応できるようになった。

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更新日 2009/07/25