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フィンランド語教材


1983年の7月~8月,東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所で,フィンランド語の集中講習 (およそ160時間) が開かれました。その講習のために3冊の教材を準備しました。

  1. フィンランド語文法」 (松村一登編)
  2. フィンランド語会話文例集」 (奥田ライヤ,松村一登編)
  3. 「フィンランド語読本」 (松村一登編)

この3冊のうち,独自に例文を作って編集した 「文法」 と 「会話文例集」 を18年ぶりに Web 版として復刻しました。「読本」 は,様々な出典からとったテキスト集で,原典のページをコピーしたものが大部分ですので復刻の対象から省きました。なお,「会話文例集」の第22章には,道路標識等の絵が載っていましたが,きれいに再現できないので省略しました。第22章が寂しくなっているのはそのためです。

1983年当時は,まだ日本語ワープロといった便利なものはなく,研究所にあった米国製の英語専用ワープロ機を使って教材のテキスト部分を入力し,デージーホイールのプリンターで出力したものに,別途用意した絵を貼りつけてオフセット印刷用の版下原稿を作りました。日本語による解説を教材そのものに付けることはせず,どうしても説明が必要な箇所には英語で解説をいれるという形になっています。

1980年代も終わりになって,研究所のパソコンの主流がNECのいわゆる98シリーズにとって替わられると,英語ワープロ機は誰も使わなくなり,私も98シリーズ用のDOSの日本語ワープロを使うようになりました。メディアも5インチのフロッピーディスクになったので,8インチのフロッピーディスクに保存してあったフィンランド語教材のテキストは,1990年頃,業者にDOSのファイルに変換してもらうとともに,5インチのフロッピーディスクに移し替えました。もし,こういった作業をタイミングタイミングよく行っていなかったとしたら,たとえオリジナルのファイルが保存されたディスケットが残っていたとしても,現在のマシンでは読めなくなってしまっていて,「復刻」 はありえなかったと思います。

この 「文法」 と 「会話文例集」 は,私の作った本格的なフィンランド語教材としては唯一のもので,フィンランド留学から帰国して間もない頃のなつかしいものです。当時来日して間もなかった奥田ライヤさんは,今も東海大学のフィンランド語講師をしています。「会話文例集」 の例文の中には,内容の点で,現在のフィンランド事情と合わなくなっているものが結構あって,気にならないでもありませんが,今でも類書がないのでまだ十分使えるのではないかと思います。いずれ例文の日本語訳と日本語による解説を書き足して,もう少しフィンランド語の入門教材らしい体裁の改訂版が作れたらいいなと思っています。

2001年6月 松村一登