多義的な文

(1)「いまごろは,京の町奉行所 [おまち] もいそがしくなっているだろうな」と平蔵がいったのは,昨夜半,常念寺から出て行った浦部彦太郎から西町奉行・三浦伊勢守へあてた手紙が,いまごろは京へとどいているだろうことを指したものである。 (池波正太郎『鬼平犯科帳(3)』)
(2) いずれにしろ、これ以上、突っ込んだ質問をしても情報は得られないと赤かぶ検事は考えたが,最後に,ホテル「セントラル」304号室の事件現場で発見された例の人形を撮影した写真を井口麻佐江に見せた。 (和久峻三『信州あんずの里殺人事件』)
(3)同時にこのことは,近頃とみに増えた日本語の文献を読む外国人読者の便宜にもつながると考えている。(鈴木孝夫『日本語と外国語』)
(4)十津川と亀井は,次に,武田という雑誌の編集長に会った。(西村京太郎『十津川警部 特急「雷鳥」蘇る殺意』)血まみれになって逃げだした賊を追いかけた。
(5)渡辺刑事は血まみれになって逃げだした賊を追いかけた。
(6)子どもができないわけですよね。
(7)でも,殺された親には時効はないんです。(テレビドラマ)

文は,実際の発話では特定の文脈で使われるので,構文的には多義的になってもいい文が,実際に多義的に理解できるケースは少ない。とくに,現実の世界に関する知識によって,意味が特定されてしまう場合がある。

(8)a. 3日間死のうかと考えた。
b. 3日間休みを取ろうかと考えた。
(9)それでは,油の回収の続いている東京湾の上空からお伝えします。(テレビニュース)
(10)伊勢屋重兵衛は屋号の入った提灯をさげてほこりを巻いて走る師走の空っ風に追い立てられるように,大通りから本銀町 [ほんしろがねちょう] 通りへ曲がろうとした。(山手樹一郎『浪人まつり/恋の酒』)
(11)日産は筆頭株主となっている日産ディーゼル株13%をボルボに売却 (ニュース,見出しテクスト)
(12)結婚式に参加した人々を乗せたバスと列車が衝突 (テレビのニュース)
更新日:2008/01/03 — Copyright © 2008 by Kazuto Matsumura