ゲルマン語概説
Germanic Languages
東ゲルマン語
- ゴート語 (Gothic) †
- [ゴート語] の資料としての残されているのは,ウルフィラという西ゴートの僧が4世紀に試みた新約聖書の翻訳が中心で,そのほかには近世のはじめのわずかの語彙集があるにすぎない。古代のゲルマン人は,ルーン文字とよばれる独特のアルファベットを使ってスウェーデンを中心に数千の碑文を残し,その古いものは3世紀にまでさかのぼるが,これらを除けば,自らアルファベットまで工夫したウルフィラの福音書のゴート訳が,[ゲルマン] 語派のもっとも古いまとまった資料である。(風間喜代三 『ことばの生活誌』 より)
西ゲルマン語
- 英語 (English)
- イギリス,アメリカのほかカナダ,オーストリア,ニュージーランドなどで母語として話され,また,世界の多くの地域で公用語・共通語として用いられる。発音と正書法との違いが著しいこと,インド・ヨーロッパ語族の中では,語形変化がきわめて乏しいことなどが特徴で,語彙はラテン語,フランス語などを大量に取り入れている。
- フリースランド語 (Frisian)
- オランダ北部の海岸,島嶼地方,および隣接するドイツ・デンマークの国境地域で話される。大陸で話されるゲルマン語のなかで英語にもっとも近い言語。もっとも有力な西フリースランド方言の話者は40万人。
- オランダ語 (Dutch)
- オランダ本国のほか,ベルギー北部,インドネシア,南アフリカ共和国,南米のスリナムなどで話される。話者約1400万人。
- フラマン語 (Flemish)
- ベルギーの北部で話される言語で,オランダ語と基本的に同じ言語。話者約550万人。
- アフリカーンス語 (Afrikaans)
- 南アフリカ共和国の公用語の1つ。オランダ,ドイツ,フランスから,1806年以前に移住したアフリカーナと呼ばれる人々の言語で,17世紀のオランダ語を母体とし,話者は6000万人(南アフリカ)。アフリカーンス語を第2言語として話す話者が,南アフリカとナミビアに数百万人いる。
- ドイツ語 (German)
- ドイツ,オーストリアのほか,スイス,ルクセンブルクなどで話される。複雑な語形変化を比較的よく保ち,複合語が豊富なことなどが特徴。話者約1億人。
- イディッシュ語 (Yiddish)
- 主として東ヨーロッパ在住のユダヤ人によって話される高地ドイツ語の一種。ヘブライ文字で書かれるため,ロシアでは「ヘブライ語」と呼ばれる。
北ゲルマン語
- アイスランド語 (Icelandic)
- アイスランドの国語。古英語から借用した2つの文字 (þ ‘thorn’, ð ‘eth’) が用いられる。
- フェロー語 (Faroese)
- ノルウェー語 (Norwegian)
- 書きことばであるノルウェー風デンマーク語 (Riksmål 「国語」) と実際のノルウェーの方言に基づく言語規範 (Nynorsk 「新ノルウェー語」) が併存する。話者約400万人。
- デンマーク語 (Danish)
- デンマーク,北ドイツ(シュレスヴィヒ地方),およびグリーンランドとフェロー諸島で第2言語として話される。話者約500万人。
- スウェーデン語 (Swedish)
- スウェーデンの国語。フィンランドのオーランド諸島や南部・西部の海岸地域でも話され(29万人),フィンランド語と並んで,フィンランドの国語の1つとなっている。第2次大戦前まで,エストニアの北西海岸,ラトビアの一部にも話者がいた。高低アクセントをもつ。話者約800万人。
更新日: 2005/10/30 — Copyright © 2005 by Kazuto Matsumura