A・キヴィ『七人兄弟』(1873)

第1章

ユコラ家は,南ハメの,トウコラ村の近くのある山の北側の斜面に建っている。家のすぐ近くは,岩地だが,少し下ると畑になる。その畑では,この家が荒れ家になる前の話だが,豊かに実った穀物が風に波打っていた。畑のさらに下の方に広がる草地は,土手がクローバにおおわれた,曲がりくねった用水路が横切っている。村の人々の家畜の放牧地になる前には,その草地から牧草がふんだんに刈り取ることができた。そのほかにも,この家の回りには,広い森と湿地と開墾されていない土地があるが,それは,かつて,このあたりの土地が農民に分配されたころ,この区画に最初に入植した者のみごとな働きによって,農場の一部となったものである。そのとき,ユコラ農場の主は,自分の幸せより,子孫の利益を考えて,山火事で燃えたあとの森を購入することで,隣人たちの7倍の広さの土地を手に入れたのだ。しかし,今では,かつて山火事があったという面影はこの農場の回りのどこにもなく,すっかり木々がおい茂って,深い森に変わっている。― この農場に生まれて住んでいる7人兄弟の人生を,これからお話ししよう。

この兄弟の名前は,年上から順にいうと,ユハニ,トゥオマス,アーポ,シメオニ,ティモ,ラウリ,エーロである。このうち,トゥオマスとアーポ,ティモとラウリはそれぞれ双子だ。最年長のユハニは25歳,最年少のエーロは,まだ18歳になったかならないかの年齢である。この若者たちは,丈夫で屈強の身体にめぐまれ,背の丈は人並み以上,ただし,最年少のエーロだけはまだあまり背が高くない。いちばん背が高いのはアーポだが,肩幅はそれほどでもない。肩幅でいちばん勝っているのは,トゥオマスで,肩幅の広い男として村では有名である。この兄弟みんなに共通する際だった特徴は,茶色で粗い肌と麻糸のような硬い髪の毛で,その特徴がいちばん強いのはユハニである。

(訳・松村一登)

更新日:2005/10/30 — Copyright © 2005 by Kazuto Matsumura