舞台は,1950年代の初めのトルニオ川の渓谷 (北スウェーデン)。10歳のエリナは,母親と弟妹たちと一緒に暮らしている。すでにこの世にいない父親の思い出にとらわれるエリナは,いつも父親のような,正義感が強い,弱者に味方する人間でありたいと思っている。病気で長期欠席したエリナは,学校に復学して,トーラ・ホルム先生のクラスに編入される。このストックホルム出身の女性教師は,荒野の子どもたちに従順さを教え,フィンランド語を捨てさせることに教師生命をかけている。
フィンランド語を話した級友を弁護したエリナは,先生のトーラに嫌われるようになる。頑固なエリナと,エリナを決してゆるそうとしない教師との間の確執は次第に激化して行くが,お互いに一歩も引こうとしない。
すばらしい自然の風景の中で撮影されたこの映画は,公正さとは何かをめぐって展開する,時代を超えた感動的な物語である。「エリナ」は,国際的な映画賞を多数受賞し,フィンランドを代表する映画としてオスカー賞の候補にノミネートされている。
(松村一登・訳)